事業を行うためには、会社を設立することになります。その場合、個人事業主としてスタートするのか、法人(株式会社・合同会社等)としてスタートするのかを、後述するメリット・デメリットを考えながら考えていくことになります。
また、すでに個人事業主として事業を行っており、法人化(法人成り)を考えている場合も、法人化した場合の節税効果を自身の事業にあてはめたシミュレーションが必要です。
以下に、個人事業主または法人のメリット・デメリット、及び法人化した場合の節税効果の概要を簡単にご紹介します。

個人事業主のメリット・デメリット

個人事業主

個人事業主での開業メリット

所得が少なければ税率が低く税負担が少ない(参考:個人の所得税と法人税の税率差を利用した節税
開業手続きが楽
開業費用が掛からない
社会保険の加入が任意(従業員数5人未満の場合)
事務・会計作業が法人に比べ簡単
交際費の限度額がない
収益を自由に使うことができる
(青色申告の場合)所得から65万円か10万円の控除が受けられる
(青色申告の場合)家族等へ給与を支給でき、経費とすることができる
(青色申告の場合)赤字を3年間繰り越し、所得から控除することができる
(青色申告の場合)30万円未満の減価償却資産であれば、全額を一括償却できる

個人事業主での開業デメリット

所得税は所得が上がれば上がるほど税金の率があがっていく累進課税(最高45%)になっているため、高所得になると税負担が非常に大きい(参考:個人の所得税と法人税の税率差を利用した節税
対外的な信用力が低い
法人に比べ、金融機関からの融資が下りにくい
決算日が指定できない(事業年度1月~12月)
事業主の給与が経費にならない(給与という概念がない)(参考:給与所得控除の適用
事業主の退職金が経費にならない(退職金という概念がない)(参考:退職金を使った節税
優秀な人材を確保しにくい
相続発生時、相続税の課税対象となる・名義変更が必要

法人のメリット・デメリット

法人

法人設立での開業メリット

所得が多くても税率が一定(800万円まで15%、800超が23.4%)(参考:個人の所得税と法人税の税率差を利用した節税
事業主の給与(役員報酬)を経費にできる(参考:給与所得控除の適用
家族等を役員として給与(役員報酬)を支給でき、経費にできる(参考:所得分散
退職金を経費にできる(参考:退職金を使った節税
対外的な信用力が高く、大手企業との取引等に有利
金融機関からの融資が下りやすい
決算日を自由に設定できる(繁忙期等を勘案した設定が可能)
(青色申告の場合)赤字を10年間繰り越し、所得から控除することができる(参考:青色欠損金の繰越
(青色申告の場合)30万円未満の減価償却資産であれば、全額を一括償却できる
(青色申告の場合)特定の機器や設備の購入等について、特別償却または法人税から控除できる

法人設立での開業デメリット

設立手続きが大変で期間が必要(定款作成、登記が必要)
会社設立費用がかかる
赤字でも毎年最低7万円の法人住民税がかかる
社会保険の加入が必須
会計処理・申告が複雑(税理士等に依頼する場合経費がかかる)
交際費の損金算入に限度額がある(年間800万円未満)

個人事業主の法人化による節税効果

個人事業主の方が法人化(法人成り)する場合、以下のような節税の効果が考えられます。しかし、売上の規模等に応じて節税効果は変わってくるため、個人事業主として事業を続けるほうが節税となる場合もあります。
法人化の判断には、そのタイミングを含め、現在の事業の内容や、今後の展望を含めたシミュレーションが必要となります。

個人の所得税と法人税の税率差を利用した節税

個人の所得税率は、所得が上がれば上がるほど率が上がっていく累進課税制度が採用されています。
高所得者の税率を見ると、所得が1,800万円を超えると、住民税10%と合わせて50%、所得が4,000万円を超えると住民税10%と合わせて55%と非常に高い率の所得税が課されてきます。

それに対して法人税に関しては、法人税、地方税合わせて所得800万円までは約23%、800万円を超えても約34%ほどとなります。

そのため、個人事業で所得が大きくなってきた場合は、法人化することで個人の場合に比べ、税率を低く抑えることができます。

給与所得控除の適用

法人化することで、今まで個人事業主だった方が社長様となり、法人から役員報酬としての給料をもらうことになります。お給料になると、法人では経費となり、個人の所得では給与所得控除という概算経費が認められているため、税額計算上節税効果があります。

所得分散

家族で役員となる方がいれば、役員報酬を支給することができます。(金額はその役員の実態によることとなります。)
そうすることで所得が分散され、それぞれの所得税率を下げ節税効果を生むことができます。

青色欠損金の繰越

欠損金が発生した場合、9年間の繰り越しが認められています。平成30年4月以降開始事業年度からは、さらに期間が延びて10年間となります。

退職金を使った節税

法人は個人事業主と違い退職金を支給することができます。
退職金は退職金規定を作成し、退職金規定に基づき適正な算出方法

●最終月額報酬×功績倍率(社長であれば3.0倍程度が限度)×勤続年数

によって計算された金額で、株主総会で決議されれば、全額を経費とすることができます。
さらに、退職金は現状の所得税法では大きな節税メリットがあります。

①他の所得と合算されず、単独で所得税が計算される。(分離課税)
②退職所得控除という大きな控除がある。
勤続年数20年以下 40万円×勤続年数
勤続年数20年超  800万円+70万円×(勤続年数-20年)
③所得が半分になる。
退職所得の金額は、原則として、次のように計算します。
(収入金額(源泉徴収される前の金額) - 退職所得控除額) × 1 / 2 = 退職所得の金額

退職金に備えて会社に残す利益、毎年の役員報酬を考えていくことで大きな節税効果を生むことができます。

消費税免税期間

法人成りの場合、個人事業とは全く別の個体として考えるので、個人事業で消費税の課税事業者であったとしても、法人化後2年間は基本的には消費税はかかりません。(一定の要件のもと消費税の課税事業者となる場合もあります。)

会社設立手続き

会社設立の際には税務署等へ届出が必要になります。

必要書類

開業届出書(個人の場合)、設立届(法人の場合)
青色申告承認申請書
給与支払事務所等の開設届出書等

特に青色申告承認申請書は、個人の場合は開業後2ヶ月以内、法人の場合は設立後3ヶ月以内に提出しないと初年度の申告を青色で申告することができなくなり、青色申告の特典を受けることができなくなってしまいます。

青色申告の特典

既出となりますが、青色申告を申請することで生じるメリットを改めてご紹介します。

個人の青色申告の主なメリット

青色申告特別控除(所得から65万円か10万円控除)
届出を提出することで青色事業専従者給与の支給が可能となる。
純損失を三年間繰り越すことができるようになる。
30万円未満の減価償却資産であれば全額を一括償却できる(中小企業者等の少額減価償却資産の特例)

法人の青色申告の主なメリット

その年の赤字(欠損金)を以降10年間にわたって繰り越して所得から控除できる(欠損金の繰越控除)
30万円未満の減価償却資産であれば全額を一括償却できる(中小企業者等の少額減価償却資産の特例)
特定の機器や設備を取得したり、特定の費用を支出した際に、その一部を一括償却または法人税額から控除できる(特別償却と税額控除の適用)

当社では上記のような開業時、設立時の届出を漏れることなく提出させていただきます。

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