財産塾かわらばん 9月号 「スムーズな事業財産移転対策」
スムーズな事業財産移転対策
昨年の続きで、財産の分割についてのお話です。
財産をスムーズに渡してあげたい、あるいはもらいたいとき
考えられる現在の対策は、
1. 遺言状を書く。
遺言があることでスムーズな移転が可能になります。
しかし、ときには遺留分の問題が発生することもあります。
遺留分とは、法定相続人(兄弟姉妹を除く)に与えられた財産を相続する
最低限の保証です。
法定相続分の1/2の権利です。
例えば、相続人が兄弟2人のとき
法定相続分は1/2ずつ、遺留分はさらにその1/2…つまり1/4は保証され
ています。父が遺言を書いて、長男に全部財産をあげると書いても、
1/4については弟は請求できます。
1/4を渡すことで事業が継続できなくなると、問題になります。
そこで、父が生存中に遺留分放棄をやってもらう方法があります。
本人が納得して異議を申し立てなければ、無事終了です。
しかし、遺留分放棄について相続後に異議が出て、取り消しされる
ことがあります。
少し不安が残ります。
次に考えられる対策は、
2. 生前に贈与する。
相続時精算課税を使って贈与税負担を軽くして。
生前に移転すれば完了するかというと、やはり、遺留分の問題が発生します。
特別受益といって、生前贈与したものは相続のとき持ち戻し計算、つまり、
生前贈与分を含めて分けることになります。
しかも、贈与時の価格でなく相続時の価格で計算することになります。
結果、後継者が父と協力して財産を増やしても、その効果は全員で分割する
ことになります。
3. そこで、よりよく移転する方法として、平成21年3月1日から実施されている新しい中小企業の経営承継円滑化に関する法律を使う方法があります。
これは、以前にも掲載しましたが、
民法の遺留分に関する特例です。
遺留分請求に対して事前に合意しておけば、制限を加えることがより確実に
できるものです。
父が生前中に贈与して
遺留分算定基礎に入れない除外合意、贈与したときの評価で計算する
固定合意、さらには他の財産についての追加合意などがあります。
その合意書をもって、後継者単独で申請して、経済産業大臣の確認と、
家庭裁判所の許可を受ける。
これにより、より厳格な手続きで完璧な移転ができるようになります。
この対策は、自社株に係る相続税を猶予する効果もあります。
4. 他の対策で、平成19年9月に施行された改正信託法を使うと、自分の
気に入らない人には渡さないことができます。
遺留分については、収益を分割給付でクリアします。
子供がいないとき、配偶者の親族に渡らないようにすることもできます。
以前よりも財産の分割の方法もいろいろバリエーションが考えられるように
なりました。
各家族の状況に応じた対策を実行したいと思います。
なお、上記の対策については、適用要件が細かく決められています。
ご相談ください。